2時間程まえ、法輪寺の手洗い脇に用意されていた杖立てに、杖を入れてお参りしようとしたら、寺務所の横にあるベンチに腰掛けたじいさんが、手招きしているのがみえた。 何だか小うるさそうなじいさんだったので、無視しようとしたが、『こっち来い!』と恐い顔で睨む。 しょうがないので行くと、『杖持って来い!』という。 持って行くと、リュックサックを降ろせという。 面倒だが恐いので、降ろすと、丸いところ(上にある掴んでぶら下げるワッカ)に、杖を通せ、という。
次に何を言われるのだろう、と、びくびくしていると、
『忘れる。』
『おまえのような足が達者なのは、忘れ物をする』
『こうすれば、忘れない。』
なんて失礼でお節介なのだろう、と少々気分を悪くしてしまい、さっさと立ち去りたかったのもあり、お参りも気がそぞろに済ませ、にこやかに、じいさんに御礼を言いに言ったのだ。
リュックを担ぐとじいさんは、腰のベルトを山野袋の上から縛れ、明日、焼山寺を目指す時には、胸のベルトも縛れ、と言って、ギチギチに締めてくれた。 うれしい心使いであったが、まったくそんな事は当然の事でもあるし、とっとこ法輪寺を後にしたのだった。
じいさんの心遣いで足取り軽く、それにしてもあの住職、どうして私がおっちょこちょいで、うっかりミスが多い事がわかったのだろうかと、半分(以上)ぷりぷりしながら、切幡寺に向かっいたのだった。
納経帳へのサインの事も忘れて。

法輪寺に戻ると既に住職の姿は無く、バス遍路の観光客で賑わっていた。
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